ぼくは人生において女性と関わったことはそうない。中学の頃は「ド」が付くほどの陰キャであったし、それ以降はそもそも女性という女性がいなかった。結局、そのまま成長したぼくはクソ童貞となった。
正月には祖父母から「あんかけ君の嫁さんの顔が見たい」と言われ、それに対して「ぼくには無理だし当分結婚する気もないから妹の彼氏で満足してくれ」と返すくだりを何度かさせられる始末である。
ぼくは「女性」というイキモノを知らないままに生きてしまったのだ。
その人生に新たな概念を植え付けるべく、嫌々ながらもガールズバーなる摩訶不思議な空間へぼくと同じように、女性へ耐性のない友人(『しゃつ君』と呼ぶ)と共に行ってきた。
発端
普段のぼくなら絶対に行かない場所である。何が楽しくて見ず知らずの女性と会話しながら酒を飲まねばならないのだ。原因を思い出す。
ぼくも一緒にいた飲み会にて、しゃつ君はこう言われた。「しゃつ君は女性に好かれる要素無さそうだよね」。聞いていたぼくらからすれば笑いの種であったが、どうやら本人はそこそこ気にしていたらしい。
ここでしゃつ君の話をしてみる。彼はともに田舎から大都会東京へ飛び出してきた友人だ。彼は黙っていれば頭もいいし大抵のことができる。しかし、口を開けばアニメや意味の分からないテーマについて話し始める、何か足りていないようなオタクである。
話の流れで「女性と会話することができるか」という話になる。しかし、お互いに女友達はおらず、この議題の検証は不可能であった。そこで提案されたのがガールズバーである。この時の前情報は「女性とともに酒を飲む」程度しかないが、とりあえず行ってみようの精神で行くこととなってしまった。
作戦
決戦当日。腹が減っては戦ができぬと飯を食いながらどこに行くかサイトを巡る。
○○ ガールズバー おすすめ|検索
画面に映し出されるのはエロサイトの広告にありそうな怪しいサイトばかりである。思ったものと何かが違う。元はといえばぼくらは会話をしたいのであってえっちなネーチャンとあれこれしたいわけではない。もっと奇麗な空間が欲しいのだ。「奇麗」が何を指すのかはわからないが、何かが違った。
探し求めた結果、サイトの雰囲気が他よりも緩かった新宿のガールズバーへ突入することとなった。
闇の中へ
店の前についてもぼくは入り口でうだうだと嫌だ嫌だとごねていた。何がそんなにしゃつ君を駆り立てるのかはわからないが、彼は勇敢にも店へと入っていった。そんな彼を尻目に、おずおずと足を進めた。
店の中はサイトの通り、ギラギラした照明もなく、ぼくが耐えうる範囲の「奇麗さ」があった。すぐさまカウンター席に案内され、酒を注文する。飲まずにはここで生きていけない。本能的にそう感じていた。ドリンクと共に店員の女の子は「もうすぐ女の子来ますからね~」と慣れた風に言う。来なくていいのだが。本心はそう告げていた。
その後の記憶は非常に薄い。何しろ酒を飲みつつ、見つかるはずもない話題を必死で探し、声を発することで精一杯だったのだから。化粧は濃かったがそこそこかわいい(多分)女の子と話すのがこんなに苦しいとは思わなかった。
しゃべった内容などは他愛もない。
僕「ぼくたちガールズバー初めてなんすよ」
女「え?風俗とかもないんですか???」
僕「そりゃそうですけど」
👕「ぼくらオタクみたいなもん(そのもの)なんで」
女「なんか珍しいですね~」
世の中の男性はどうやって生きているのだろうか。これを楽しみに来られる人種があるというのだろうか。
女「出身地どこですか???」
👕「岐阜やね」
女「岐阜って琵琶湖とかある?」
僕「それ隣やんwww」
👕「名古屋の北のやつ」
岐阜県民として若干の悲しみを覚えた。それ以前に、よくよく考えてみれば話題がない時の定番の話のネタである。これをテーマで楽しく話すには桃鉄をやりこむくらいの知識がなければ苦しいというのに、人はなぜこの話題をしてしまうのだろうか。
あとは大した話もない。仕事上作業をするうえで一緒になった他の会社の方とする雑談並みの話しにくさだった。ぼくもしゃつ君も口が止まらないように頑張ってはいたものの、ぼくは合間合間にある沈黙が耐えられずに酒を口にただ運んだ。
こんなぼくらの相手をしていた女の子はぼくらより年下、女子高生であった。新たに知ってしまった世界に驚きながら時間を迎え、退店となった。
反省会もかねてミスドへ寄り道をし、苦い体験の口直しに、と二人でドーナツをほおばりながらこの不可思議な体験について二人で語り合ったのだった。
感想
最初からわかりきってはいたことだが、ここまで自分が普通の会話のできない人間だと改めて実感させられた。相手がベテランではないということもあったのかもしれないが、やはり自分ではどうすることもできなかった。
そもそも「会話」には何かしらのテーマや共通点が必要である。うまくそれらを見付け出せないぼくらにとっては、段階を飛ばして風俗に行ったほうがいいのかもしれない。面倒なことに頭を回す必要がないのだから。
この場を借りてしゃつに提案してみよう。次は風俗で一発やりにいこうや。
謝辞
最後に、今回ぼくを先導してくれたしゃつ君に礼を言いたい。別に彼一人で行ってこればよかったのだが、彼のおかげでするはずのない体験ができたのだから。
彼もこの件についてブログを書いているため、合わせてこちらも読んでほしい。
久しぶりの記事がこんな内容で申し訳ないが、またなにか書くと思う。
その時はよろしくお願いします。