あんかけが書く

かきたいことをかきます。

ラーメン屋に行こう!

 あんなに暑かった月始めもどこへやら、少し冷えつつある10月中旬。小雨の中をとぼとぼ歩く男が一人。私、あんかけである。

 

 勤め先*1からの帰り道、いつも目を引く建物があった。長方形で古ぼけた壁の無骨な見てくれ、窓から漏れるはオレンジの明かり、そして正面には赤のれんに並ぶ文字、「ラーメン」。

 今日は金曜日だが、家に帰れども米は炊くほどの暇は無く。一週間の御褒美に、と麺をすするべく店に向かった。

 店の前には「あっさり仕立てに隠れたコクとうまみの支那そばあります」と書かれたA型看板が堂々とそびえ立つ。この小さな引き戸の奥にはそんな彼が待っている。大きな期待を胸に入店する。

 

 おばちゃん2人と10人程度のカウンター席が私を出迎えた。スキンヘッドのおっちゃん以外、席はガラガラだったが、後から来店する人を考えて少し奥に座る。塗装の剥げてきた机にはよくある調味料。膝が当たればミシリと音を立てる。非常に雰囲気が出ている。

 セルフサービスの水を取り、カウンターの上に書かれたメニューを眺める。ここはやはり支那そばだろう。決めていた私の心を揺り動かすのは「半チャンラーメン」なる文字列。半チャンなる単語は麻雀でしか聞いたことがないが。

 

「すんません、半チャンラーメンってなんすか?」

「チャンはチャーハンよチャーハン。それの小さいのと支那そば。」

「ならそれで。油は多めでお願いしゃす」

「はーい」

 

 ラーメンとチャーハンは最強のコンビである。MIBのJとKくらい最強だ。そしてなぜか年季とチャーハンの味は比例し、ラーメンそのものよりも美味いチャーハンが出る店もある。もはや中華料理店のチャーハンは1つの楽しみである。

 今更言うことでもないが、私はラーメンがすきである*2。ラーメンの麺とスープと具材と香りと器と漂う湯気がすきである。それ以上言うことはない。ラーメンがすきだから。

 

 おっちゃんとお喋りしながらもおばちゃん2人は手際良く調理を進め、皿が並ぶのは早かった。ラーメンとチャーハンが同時に出てきたこともすごい。2人でやっていると言えども盛り付けもほぼ同時なのは長年の経験からできることだろうか。いただきます。

 

 橋を持ち上げ中華麺特有の黄色い麺と対面*3。一息置いて麺をすする。醤油ラーメンにちょうど良いやや柔らかめ、それでいてナヨナヨしていない程よい仕上がり。麺と共に口に飛び込むスープの風味もたまらない。これは美味。

 次はスープをレンゲにすくって一口。やはり魚介系の出汁。主張し過ぎない味の奥底にあるうまみ。これが隠れたコクとうまみというヤツだろう。メインに来るのは濃いめの醤油。麺はもちろん、具材のワカメとメンマにも合うちょうどいいバランス。これはうまい。

 ラーメンを楽しみながら横の皿、チャーハンへ。油多めで炒められた輝く米はいつもの白米と違った顔を見せてくれる。周囲の卵や軽く焦がしたネギがチャーハンとしての格を高めている。この感じはきっと味覇ではない。いつも食べているからわかる。これはおいしい。

 

 黙々と食べているとおっちゃんに急に話を振られた。

 

「ニーチャンは若いしパチンコなんざやらんやろ」

「まあそっすね、たしなむ程度*4ですよ」

「世代やなあ、若いうちはもっと外出ていろいろ遊んどくべきやな」

「はっはっは、インドア派なんで引きこもりますわ」

 

 こんな感じで適当に雑談をした。おっちゃんもおばちゃんも特になにごともなく。スマートボールの話なんかも出た。酒を注ぎつつぼやきながら喋るおっちゃんと、それに軽口で返すおばちゃんたち、それに耳を傾けながら食う私。店の雰囲気といい、ここは昭和になった。こういうところが「年季ある店」の良いところ*5である。

 

「おばちゃん、おあいそ」

「はいはい、ニーチャン学生さん?」

「一応勤め人です」

「そか、暇があったらまた来てな」

「どうも、ご馳走様」

 

 次はネギラーメンでも食べに行きたい。

*1:仕事が見つかりました

*2:日清のトムヤムクンラーメンは滅びてほしい

*3:麺だけに

*4:音ゲーの1/10くらい

*5:悪いところでもあるのだろうけれど