おやつというものに対してあまり記憶がない。幼少期はやたら菓子パンコーナーのドーナツを食べたがっていたらしいが、小学生の頃はあまりおやつを食べていない。そもそもおやつがいつもあるほど裕福でもなかったのかもしれない。
そのせいか、母親が「おやつ食べよ」と言いながら出してくるものは大抵喜んで食べていた。なおかつ、おやつとして出されるものは煎餅だの歌舞伎揚げだのと若干ばーちゃんが食べそうなのもばかりだった。友人の家で食べたロッテのチョコパイに腰を抜かすほどにはおやつに対する感覚が鈍かった。恥ずかしながら2個くらい食べさせてもらったと思う。
そんなぼくのおやつ事情はさておき、たまたま見つけたら買って食べるものはある。それが柿の種だ。
稀に、よくわからない小売店で業務用サイズかと思うほどの量が売られている。柿ピーではなく柿の種だけ入っているものだ。買っては一ヶ月ほどかけてポリポリと食べているのだが、当然しける。しけった柿の種はあまりすきではない。捨てはしないのだが。
タレがシミていてなおかつ「カリッ」とか「バリッ」と形容されるあの食感があるからこそ柿の種だと思う。それもあり、昔見たチョココーティングされた柿の種は食べたことがない。あれはどうなんだろうか。
柿の種がすきな理由は柿の種そのものだけではない。家には亀田の柿の種がよく置いてあったが、その小袋の裏面に「けなげ組」という小ネタがあった。今ではなくなったそうだ。
小学生の頃のぼくはおやつとして出てきた柿の種を食べながらこれを読むのも一つの楽しみだった。あまり目立たない物が「俺も頑張ってるんやぞ」と愚痴を漏らすような内容だ。センスがあると思いつつ必ず読んでいた。そこそこの数食べたが100番の「あなた」を見たときに少しの感動と優しさを感じた。
そんなことを思い出しながら今夜は酒を飲む。