あんかけが書く

かきたいことをかきます。

ゲームについて思うこと 16 『第四の壁』

 ほとんど自分用メモみたいなもの。記事として体裁を成す形にはしていきます。ネタバレになったりするのでタイトルは出しませんが、「〜〜〜するゲーム」と出たらアレかな、と想像してください。

 

 そもそもタイトルの「第四の壁」とはなんぞや、という話から。

ja.wikipedia.org

 演劇でよく使われる言葉だと思います。客から見て右側・左側・奥側の幕で第三まであり、その次に仮想的に作り出されるものとして舞台の世界と観客の世界(私たちの現実世界)の区切りの第四の壁になります。四方を囲まれた舞台の上は箱庭のような世界となり、その空間で登場人物は何事かをします。そこをマジックミラーのように一方的に観察するのが観客です。

 

 これをゲームの話に置き換えます。

 

 ゲームでの演者はキャラクターです。もちろんテトリスとか塊魂のようなオブジェクトであることもありますが、キャラクターであるとしましょう。となると、観客はプレイヤーです。今の時代はゲーム実況がありますが、直接見ているわけではないのでプレイヤーに限ります*1。キャラクター、ゲーム世界をプレイヤーはモニターやゲームウインドウという第四の壁を挟んで観察することになります。

 この時、演劇と違うのは物語に干渉できるところです。RPGで「次は〇〇へ行こう」とキャラが言いながらプレイヤーによって別の地点へ行かせることができます。演劇で「次は〇〇に行こう」と言って別の地点に行っても結局それは台本の通りになってしまいます。役者さんのアドリブで本題が変わっても、観客にはわかりません。

 そしてそれら演劇や鑑賞対象となる作品は、たまにこの壁を破ってきます。古い例えになるかもしれないんですけど、アニメならヤッターマンとかそうでしょうか。ボヤッキーがあろうことか「全国の女子高校生の皆さ〜ん」とテレビの奥に呼びかけてお便りを求めて、実際に手紙が来ていたりするとか。壁とかその辺の概念が崩壊しています。マンガのそういう話ならドラえもんのび太のパパが「2ページは説教する」って言った後に本当に2ページ説教のコマが続くやつがすきです。

 

 ゲーム内だとこんな感じに出てきます。

  1. チュートリアル内の操作説明、解説
  2. ゲームシステム内で言及・演出がある
  3. ゲーム世界、設定の根幹に関わる何かを成す

 順番に見てみます。

 

  1. チュートリアル内の操作説明、解説

 アクションゲーを何本かやったことある方は絶対に聞いたことあると思います。

「主人公!〇ボタンで攻撃、×ボタンでガードだ!」

「先輩、○ボタンてなんすか?」

「気にするな、まずやってみろ!あいつらがくるぞ!」

みたいな流れで出るものです。ロボットゲーとかだとゲーム世界ロボットのコクピットについているボタン、という設定でボタンが出ることもあります。アーケードゲームはそれらしいコントローラーになっていたりするのでわかりやすいですね。

 この時の「チュートリアルの説明役」にも何種類か存在していて、先輩以外にも同僚教官旅の仲間ゲームのマスコット機体搭載のAI天の声などなど。もっと出せると思います。仲間からの説明であると基礎的な立ち回りとか「俺は〇〇が得意だからそこは任せてくれよな!」「私は苦手かも…」と仲間が説明してくれるパートもあったりするので面白いです。この辺は項目3に近いところかと。キャラではなくナレーターや天の声であってもシリーズの顔のような語りであったり、急に旅で出会ったりするんですよね。このパターンも不意の驚きがあったりして良いです。で、「ボタン」という概念を持っているということは……、と考察も広がりそうです。

 現行のゲームハードでは説明書が無くなってしまったものが多いので、こうしたチュートリアルをよく見かける気がします。記憶容量に余裕が出てチュートリアルもできるようになったことと説明には「」時代の流れですね。

 

*2

 

 2.ゲーム内ではっきりと言及・演出がある

 ここから項目1と比べて思い浮かぶタイトルは減るのではないでしょうか。普通にタイトル出せるやつだとスマブラが手っ取り早いです。上に吹っ飛んだ後に画面側に張り付くあれです。

 

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「手前張り付きバースト」とか呼ばれる

 

 スマブラ世界と現実世界は「間に薄いガラス板が挟まれている」のではありません。ややこしく書くなら「スマブラというゲームを成すプログラム内で、ある条件で撃墜を満たした時にこの演出をする」ものです。*3この演出はプレイヤー側を意識して作られているものですね。意識していなければ張り付く先は横とかでもいいので。

 

 演出だと他にはあのRPGの最中に「あなた」の名前を聞かれるものも当てはまります。何に使うんでしょうね(すっとぼけ)。本来はゲーム中のストーリー、その他としては一つも必要とされません。でもなんかいいですよね。最近だと入力もしていないのに名前が出てきたりするのも新しい感覚です。

 ゲーム世界の謎解きに現実世界の何かが使われるもの一つでしょう。項目3と被るので線引きが難しい。ゲームと現実世界を結ぶ物体はいろいろあります。公式サイト、ゲームパッケージ、コントローラー、どこかの施設、プレイヤーそのもの。何か引っかかったものはあるのではないでしょうか。ゲームの世界をゲームから少し手の届くところまで伸ばす試みはぼくの世代より前からあるわけなので、これからもその表現で面白いものができると思います。

 

 

  演出の一環になりますがゲーム内アイテムに登場することもあります。思い当たるものは「Cookie Clicker」ですかね。 このゲームはクッキーをものすごい数焼き、作ったクッキーでさらにクッキーを作る施設を購入し、またその施設からクッキーを作るゲームです。2013年くらいにTwitterで話題になったかと思います。その中の最強のクッキー生産施設が「Javascript console」です。これが何かというと「このゲームを記述していることに他ならないコードからクッキーを生み出す施設」*4になります。世界を書き換えてクッキーを作ってるということですね。

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最近やっと買えました

 もうガッツリ世界からはJavascriptで書かれてると言っちゃってるんですよね。しかもゲーム内から。こうなるとゲーム側が現実側ににじり寄ってきている様子が感じられます。これ以降、「Javascript console」の強化アイテムに「Stack Overflow」とか出てきます*5。仕事や趣味や学業でお世話になっている方もいるかと思うアレでしょう。こういったジョークとしての面も持たせられるでしょう。 

 

 上記は「ゲーム側が現実側ににじり寄る」という表現をしましたが、ゲーム界の何者かが「プレイヤー」を認識し、言及してくることもあります。

  これは「ICEY」というゲームの一場面。

store.steampowered.com

 ゲーム中の流れは1→2→3枚目になってます。4枚目の画像はおまけです。何が起こっているかと言うと

  1. (画像1枚目)「矢印に沿って進め」とナレーターに言われたので進んでみる
  2. (画像2枚目)橋があるっぽい、ナレーターは「制御装置を動かさないとダメ」と言ってくる
  3. が、ダッシュギミックで装置を無視して飛ぶ
  4. (画像3枚目)ナレーターもびっくり

 ということです。声優さんが下野紘さんなのでこれ系の語りは楽しく聞けます。同じように、ゴリ押しでパズルを突破すると4枚目のセリフが出たりします。もうちょっと奥に進むと項目1のようなイベントとそれらへの言及もありますがそれは買って確かめましょう。

 

 同じ系統でナレーターからいろんな発言が飛び出すゲームで言うともう少し前に出たこちらの方が好きなのですが、実績に「5年間このゲームをプレイしない」があるので紹介できませんでした。今ちょうど4年くらいなのでもうちょっと待ってください。

store.steampowered.com

 こちらのゲームは既存のゲームに対するアンチテーゼ的な要素も含まれていますが、まとめの部分で触れましょう。

 

 上記のようなナレーター、ゲーム中からの刺激に対して明確に意思のありそうな反応を得ながら楽しむ「対話ゲー」*6について、何を期待し、楽しむかは触る人によって全然違うんですよ。「流れに沿って進むとどう終わってくれるか」「適当なところで反抗してどう意見されるのか」「この作り込みならここにも反応があるんじゃないか」「他にエンディングはないだろうか」「このゲームと普段のゲームから何を考えよう」とか。ある程度段階的に進みますが、着地点はかなりバラバラになって面白いです。

 昨今はテキストの選択式ADVの実況プレイによって実況者の考え方を見て楽しむ、というのも出てきていると思います。楽しみ方の「プレイして感じる」へ「見て感じる」が追加されたように思います*7。こちらはテーマとずれるのでこの辺で話を終わらせます。

 

 

 3.ゲーム世界、設定の根幹に関わる何かを成す

  この項目3の話は「世界、設定」は最初に説明してくれるものから最後の種明かしまでいろいろあります。後者の「最後の種明かし」は具体的に言ってしまうとネタバレですね。ゲーム中でも最後まで言わなかった理由があるので。ここでは先に「どういうこと?」という説明から入ります。

 この項目に当てはまるのはゲームである世界を自覚したゲーム、と呼ぶべきゲーム達です。

例としては「moon」の世界観ですね。 

 moonは「プレイしているゲーム内のゲームに入り込んだプレイヤー(キャラ)をプレイヤーが操作」してストーリーが進みます。何言ってるかわかんないと思いますが世界観はそういうことです。もう少し後でこのゲームの話もします。

 

 ゲームとしてのセオリーは、ゲームをプレイすることで自然に脳味噌が覚えていきます。適当なRPGでも「レベルを上げればつよい」「モブの村人キャラとの会話で情報を得る」「重要な選択、局面では間違えても戻られるようにセーブしておく」だとかの基礎的な概念は理解できるようになります。そこに入り込むのがこのゲームたちです。もしも、レベルがレベルじゃなければ?もしも、モブももっと言いたいことがあったら?もしも、決断は一度だけなら?そういう「もしも」から広がるものでもあります。実際の製作者の発想の源は違うと思いますが、これらを表現の一つに含めてできているゲームと言えるでしょう。

 

 自分用メモですが、誰かがみた時にネタバレになるのがもどかしいですね。感想メモだけまとめましょう。

 

 これらのゲームはゲームのセオリーをちょくちょく覆してきます。先程のmoonでは最初の街をうろつく時点で「今、勇者が通りすがりの動物焼き殺したよ!?ひどくね???かわいそうだよね???」とか「ちゃんと村人が曜日・時間で違う動きをして生活していますよ」とか主張してきます。これ、ゲームやってる人*8に刺さりがちです。自分がやってきた行動になんとゲーム側からケチをつけられるからです。

 ケチをつけられる、はちょっと表現が悪いですね。「プレイヤーのゲームに対する常識をひっくり返してくる」ものでしょうか。この常識を積みあげている人ほどいろいろ感じるところが多いのでしょう。今、これを読んでいる最中も思い浮かんだゲームは何作かあるのではないですか?

 

 ぼく個人の考え方は「ゲームはあくまでゲームであり現実ではない。ただし、その主人公になってプレイした時間、経験体験、感想は現実のものである」です。こうして経験感想を積み上げてできているのが凝り固まった「ゲームの常識」です。ここ数年でいくつかのゲームに手を出したので、言語化できない何かがぼくのなかにできていると感じます。

 それを難なく返してくるのがこの群に入るゲームです。常識の壁破ってきます。そして「ゲーム」がまた壁を通して直接ぼくに語りかけてくるんですよね。もう感情の渦です。そこから一度離れようとしても、直接刷り込まれた考えによってふとした時にゲームを変な視点で見てしまうようになりました。このゲーム、ゲームとして楽しんでいいのだろうか、と。いや、ゲームなんですけど、もしさっきのゲームみたく実は〇〇で〜とか言われたらちょっとどぎまぎしちゃうんですよ。道徳心を持ち込む場所じゃないのに倫理的にどうなのとか考えても仕方ないというか。

 

 ぼくがかなりこういう考え方を引っ張るタイプなのでそうなってます。

 ちらっとここまで読んじゃったみなさんがどうとか知りません。

 これを読んだ自分に「そういう奴だったよな、自分」と思わせるための文です。

 

 

 

 分類の話はその辺にして。

 

 この辺の表現とかは結局「製作者」が作ったものです。ゲーム中に製作者は出てこない*9のでこれらの話をするのは「ゲーム内キャラクター」となります。ゲーム中は世界の構造についてキャラクターから言及されます。例えば急にキャラクターが「この世界はゲーム!ゲームとかいう子供みたいな遊びをやめろ!!!大人になれよ!!!!!」*10と言ってきたとします。このセリフはキャラクターが言いそうな背景があった上でのセリフとなります。しかし、キャラクターがどんなにこのモニターの存在を認識しようとも、製作者の筋書き通り、シナリオ通りです。どんなにキャラクターがゲーム上で話、驚きを与えたとて、製作者の掌の上となっているのです。

 これは気が付いてはいけなかった部分であると思っていて、製作者の影がどこからか見えてしまうとものすごく悲しくなります。あんなにありがたく聞けていたのに、急に説教に変化してしまう感覚です。ぼくは今まで「主人公」になっていたのに、主人公から引き剥がされ、世界から引き剥がされ、「ぼく」に対してゲームを越えたさらに向こう側から「製作者」の言葉が飛んでくるんです。ここまでくるとゲームが一つの主張する手段になってきます。そういうゲームはこの枠関係なくありますが、製作者その人から飛んでくることが気になってしまうところです。壁を超えてゲームと自分が混ざってきた時にそういう話が飛んでくるからこその感覚になるのでしょう。

 

 

 あとはこれからの話です。

 今までの第四の壁を破るゲームはゲームからプレイヤーを見ていました。あなたの目を見て言葉を語ることもあれば、あなたのデバイスに悪戯することもあったでしょう。あなたに対して驚くような言葉を投げかけてきたかもしれません。

 これからの壁の表現は気になります。VRはもちろん、位置情報を用いたゲームアプリも今のところ好評です。これらはどちらかというと「プレイヤーが完全にゲームの世界に入り込む」「ゲームが現実世界に溶け込んでいる」ものです。文字を並べると正反対になりますね。VR/AR使った表現はまだ未発達ですが、楽しみになるようなことがそのうちできると思いたいですね。

 

 今日もまたゲームしようと思います。では。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんかめちゃくちゃ長くなってしまった

*1:演劇の舞台を楽しむ観客を監視カメラ越しに見る警備員さんとかそのポジション?でも演劇を楽しむわけでも観客の反応を楽しむわけでもなく、それ以外の異変のための監視なのでまた違う。いい例えがない。

*2:この辺のチュートリアルで覚えた操作を本編ずっと使ってクリアしていくけど急にラスボスがその考え方の概念を崩壊させて全く同じシステムで違う脳みそを使わされるゲームが頭から離れないですね。めちゃくちゃ好きでそのパートだけやりたくて周回してました。これチュートリアルつながりですが本筋と違うので脇に避けます。気になった方は聞いてください。

*3:非常に残酷な話ですがどんなゲームの世界もプログラムです。

*4:https://w.atwiki.jp/cookieclickerjpn/pages/7.htmlより引用

*5:フレーバーテキストではエラーの名称としても取れますがコードに関して効率よく書き換えができるもの、と考えると後述のものになるかと

*6:今名付けました

*7:大抵の場合ぼくは自分の意思でプレイして決定した物事に対して楽しみたい派です

*8:「ゲームやってる人」はとにかく2~3本ストーリーのあるゲームしてればいいです。ゲームしたことあればそこでゲームの当たり前ができていると思うので。

*9:出てくる時もある

*10:一生ネタにする勢い