あんかけが書く

かきたいことをかきます。

ドラクエを引きずる

 大人になりきれない。

 

 あの映画で受けたダメージが寝ても薬草をキメても回復しない。HP減少ではなくステータスダウンという凶悪な永続デバフでもかかったのだろうか。摩訶摩訶のレベルダウンかよ。

 

 多分あの映画で伝えたかったのは、『ゲームは虚構であるが無駄ではない』だと思う。

 でも、全てにおいて致命的な表現のミスをしている。具体的に何かはわからない。俺は映画の評論家でも製作者でもなんでもない。ただのオタクである。

 それ故に、あの映画の解釈を腑に落ちるものにしたくて、レビューを読み漁った。大方は酷評である。不満や俺のように価値観の崩壊に恐れる言葉に同意こそすれ、褒めたものでも納得できる文章に巡り合うことはなかった。

 仕方がないので多分アレの製作者と相反する見方をしていたことにする。アレが西に向けていたなら俺は東を見ていたのだ。順に自分の考えを整理するかの如く反対意見でも並べていくことにする。このままでは自分を失う。まるでミーム系SCPにやられる博士の手記である。気持ちがわかる気がする。

 

 

 『ゲームは虚構であるが無駄ではない』。これは間違いとは言い切れない。自分流に言い直すなら『ゲームも現実とリンクして意味を成す』だろうか。

 ゲームだけを見ればそれは空想で、リアルとは確実に違う。ゲーム内なら特技はイオナズン、金に困れば外に出て魔物狩り、努力していればそれなりに強くなれる。ドラクエから離れても、ギャルゲで恋愛マスターになれるわけでもなく、格ゲーで肉弾戦の強さを手に入れられるはずがないのだ。

 それでも、あの世界には俺が倒したあいつがいて、俺が救った世界があって、俺が望んだ平和があるのだ。昔からのめり込んだからこそ、それは現実よりも強固な思い出としてあり続ける。

 この思い出の積み重なりにより彩りが生まれるのがRPG。本筋は同じだが、ゲームによる思い出は人それぞれとなる。あのボスは強かったが気合と回復でゴリ押した、いや俺は装備を整えレベルを上げて圧倒した、いやいや私はこんな戦法が有効だった。思い出の話し合いはさながら学生時代の友人と昔を懐かしむかの様子。

 ここで勇者と勇者は繋がって、現実でリンクする。データと旅した人間は、画面を飛び出して同じ世界を語り合う。「そこに隠し通路あるぞ」と教えてくれる親父も光の戦士だったのだ。今のゲームはオンラインだが、ゲームを外界への門として、誰かの世界に干渉できる気がする。

 最近はゲームをしてない人と話す機会が多いおかげで、この考えは一般的な観点から見て異端な部類にあると思うようになった。ある奥様に「俺達、ここで仲良くゲームして大会してイベントに手を貸して、とする関係ですが名前も年もよく覚えてません。知っているのはあだ名(ハンネ)と使うキャラくらいです。」と話したら驚きの表情をされた。オタク以外にはわかりかねるのだろう。

 思い出となる物語、画面の向こう側の向こう側にいる思い出の共有者。『ゲームも現実とリンクして意味を成す』の表すものである。世界は偽物であろうと、俺が体験したことに間違いはないのだ。

 

 さて、映画の話に戻る。

 アレがしたことは「テクスチャベリベリ、データ破壊w!で?こんなもの見て熱中しておかしいんちゃう?これ0と1の羅列なんすよ?マジくだんねーわw大人になったほうがいいですよ」である。それに対する返答が「思い出は残ってるからうんぬん」みたいな。そこじゃないんだよな…。

 第一に、この映画に対し観客が求めていたものは「ドラクエ」のCGアニメ映画である。飛ばし飛ばしだが物語に沿った流れを見てドラクエⅤを懐かしみ、よく動くキャラに驚く。それで良かった。それなのに急に「ゲーム」の話をしてしまった。マイナス。

 もう一つが、映画もゲームも同じ娯楽作品のはずが、本筋に否定を入れてしまった。否定の否定も行うのだが、一転攻勢をするには薄いうえに流れが唐突すぎるためにあまり響かない。もう少しそれらしいシーンがあれば、もう少し否定の表現が違えばと思うばかりである。

 他に気になる点として、あまり本編以外の場外乱闘はしたくないのだが、調べてみればメインの監督の2/3が原作プレイしてないとか。

 原作設定オタクからすればありえない話。そこに原作があるならそれを第一に置くべきではないのか?改変は自分が誰よりも何よりも原作を愛しているからと言う自負を持ってするべきではないのか?ましてやそれを商業として夜に送り出して良いのか?疑問は尽きない。

 

 

 

 なんかもう「俺のドラクエ、俺のゲーム観を返して」以外に当てはまる言葉が無い気がする。

 ドラクエⅤが好きな人、ゲームが好きな人は見に行かないほうがいい。温厚な俺がここまでしんどくなっているのも久しぶりなのだ。見るにしても別人格を作って見るのをおすすめする。