先週、MOTHER3を三連休のぶっ通しでクリアした(2は以前にnew3DSのVCでクリア済み)。以下はMOTHER2、3のネタバレが多く含まれるため、これからプレイしようと考えている人にはあまりおすすめできない。
明るい印象であったMOTHER2とはまた違う、少し異様な雰囲気ではあったが、それでも「MOTHERらしさ」のあるゲームであった。評判としては賛否両論あるようだが、ぼくは良いゲームだと思う。クリアし終えてからなんとなく、家族にメールでもしたくなる。そんなゲームであった。
さて、本題はMOTHER2、3に登場する『ゲーム史に残るクソガキ』といっても過言ではないポーキーについてである。
今のうちに少し彼について紹介する。生まれ育ちは田舎町のはずれ、MOTHER2の主人公ネスとは幼馴染である。家族には両親と弟がいる。弟は至極まともだが、両親は子供を置いて外食に行ったり、事情があるにせよネスの父親との金銭のやりとりについてネスへ告げ口するなど人として、親としてどこかおかしい人たちである。ネスに対しては友人と思っており、MOTHER2序盤に「4人の少年少女が世界を救う」と告げられた際には「オレもその中の一員かなぁ」などと考えたりする。
結局ポーキーは世界を救うメンバーではなかった。むしろ逆の立場となり、行く先々で新興宗教の幹部や金持ちなどの権力者に取り付き、ネスたちの邪魔をするのだ。彼は常に悪の道を進み続け、ついにはMOTHER2のラスボス、ギーグの側近になってしまう。ギーグが倒されたのち、彼は別の時空間へ逃れる。一通の手紙を残して。
ここまでがMOTHER2のポーキーである。ネスの旅とは正反対の道を行ってしまうのだ。
MOTHER3ではラスボスとしてポーキーが現れる。3でのポーキーは生身による時空間移動を繰り返した結果、老化は進むが不死状態となっており、よぼよぼの状態でベッドのまま登場することから、恐らく普段はベッドで寝たきりとなっている。ポーキーがこの世界で働く悪事は主人公リュカたちの住む島の生態系を破壊(動物をつぎはぎしてキマイラ化)し、世界を守る「針」を抜くことで世界の滅亡を狙う。この行為に目的はなく、不死である自分の退屈しのぎのお遊びである。
このときのポーキーの精神は様々な場面で垣間見ることができる。例えば、敵軍設備のイカヅチタワーの一室ではたくさんの子供のおもちゃ、本拠地のニューポークシティのエンパイアポーキービルでは主人公たちへいたずら代わりにビルを彷徨わせ、ポーキー型のロボットとゲームをさせられる。これらからは子供として遊びたい考えがわかる。老化はしているが、精神は何も変わっていおらず、むしろ退化しているのだ。
また、誰と遊びたいか、なんてものは決まっている。「ともだちのヨーヨー」を護衛をつけて大切に守り、映画館ではネス達の物語をいつまでも流し、自身の部屋の近くにネスの冒険ゆかりのものを並べているのだ。それほどにネスを友人だと考えていたのだろう。
しかし、現実は違った。どの時空間でものけ者扱いされ、果てには元の世界に帰ることはできなくなってしまった。ある戦闘では、ポーキー型ロボットが雑魚敵召喚として「よべばくるやつ」を連れてくる。「よべばくるやつ」、すなわち「呼ばなければ誰も来てくれない」のだろう。しかも、それらは人間ではない。軍の人間すら来ないのだ。その対称として、この戦闘の直後には冒険で出会ったリュカの仲間が駆けつける。本当の仲間は呼ばなくても来るということだ。
結論、ポーキーは誰かから愛されたかったのだ。設備の中には、人や動物が「ポーキーを好きになる」という効果の液体で洗脳されている場所もある。レストランにはポーキーの母親そっくりなアンドロイドが「いくらでも好きなものを食べなさい」とパフェやハンバーガーを売っている。このレストランにも親からの愛を求めるポーキーの理想の母親像がここに溢れている。
こう書いてみると、ポーキーは非常に可哀そうな奴である。誰とも素直に仲良くなれなかった結果、一人で寂しく生きることになってしまうのだ。しかも必ず開けられない「ぜったいあんぜんカプセル」の中で。ポーキーにとってこれ以上の苦痛はないだろう(EDでうれしそうに転がっているが何を思っているのかはわからない)。この先、永遠に誰ともを持てないのだから。皮肉なことに、ほかの人間にとってはこれが幸せなのだ。
ポーキーはMOTHER2で一度、ネスに謝る。しかし、ネスは無言で見つめたきり、何も返さなかった。もしここでネスが頷いていれば、ポーキーの人生は良い方へ向かったかもしれない。
物語に「もしも」は無いが、少し考えてしまう。